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感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン9」第16話「ウィリアム」

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン9 http://dlife.disney.co.jp/program/drama/xfile_s9.html

放送 Dlife。全20話。

【※以下ネタバレ】

 

 

第16話 ウィリアム WILLIAM

 

■あらすじ

 お題は「政府の陰謀、異星人の侵略」。

 X-ファイル課に不審者が侵入し、ドゲットを襲ってX-ファイル資料を持ち出そうとするが、すぐに捕まった。犯人の男はモルダーのカードキーを所持しており、モルダーの妹サマンサに関する資料を盗もうとしていた。男は全身に大火傷を負っていて元の人相も解らないほどだったが、本人は政府の人体実験によってこんな体にされたため、政府に復讐をしたいのだという。そしてモルダーから助言を受け、助けになるだろう資料を求めてFBIに潜入したと告白する。

 ドゲットは、男の正体はモルダーで、逃亡していたのに結局追手に捕まったため、それを恥じて別人のふりをしているのだろう、と推測する。スカリーは信じないが、男のDNAを鑑定すると、なんとモルダーと同じだった。スカリーは火傷男を自宅に連れていくが、男はこっそりウィリアムに謎の注射を打ってしまう。スカリーはすぐにウィリアムを病院に連れていくが、検査の結果何の異常も見つからなかった。

 実は火傷男の正体は、死んだと思われていた元FBI捜査官ジェフリー・スペンダーだった。スペンダーは、ウィリアムにマグネタイト磁鉄鉱)を注射することで、ただの人間に変えたという。スペンダーは政府に異星人に作り替えられようとして失敗し、今のような姿になった。スペンダーの父親スモーキング・マンは、異星人の入植計画が失敗した後、今度は人類絶滅を計画したため、スペンダーは異星人にとって重要なウィリアムをただの赤ん坊に変えることで、父親に復讐を果たしたのだった。

 スカリーは、今後も異星人がウィリアムをつけ狙うだろうと考え、もはや自分では守り切れないとあきらめ、苦渋の決断でウィリアムを養子に出すのだった。

監督 デヴィッド・ドゥカヴニー

脚本 クリス・カーター(原案 デヴィッド・ドゥカヴニー & フランク・スポトニッツ & クリス・カーター

■感想

 評価は○。

 いわゆる「神話」系統の話で、スカリーの息子ウィリアムについての物語の締めくくりとなるエピソード。しかし、あまりと言えばあまりの結末に脱力してしまった。

 今回、番組内容云々の前に目を引いたのが、モルダー役のデヴィッド・ドゥカヴニーの番組への帰還だった。シーズン8の最終回をもって完全に番組から離れたと思っていたのだが、この終盤になっていきなり復帰したと思ったら、「監督」兼「ストーリー原案」兼「役者(カメオ出演)」と、フル参加してきて驚かされた。

 一説によると、ドゥカヴニーはシーズン7の終わりに、ギャラのことでクリス・カーターと揉めて番組を降りたとも言われていたのだが、ここに来て和解が成立したのだろうか。まあ、番組の質が低下しきって打ち切りが決定した段階で戻ってきても今更感が強いが、いないよりはいてくれた方が嬉しいのも事実である。ちなみにカメオ出演は、スカリーの瞳の中にちらりと姿が映るシーンである。実質一秒しかなかったが……

 ストーリー面で驚いたのは、あのジェフリー・スペンダーの再登場だった。スモーキング・マンの息子で、モルダーのライバル的な存在だったが、

シーズン6・第12話「ファイト・ザ・フューチャー Part2

のラストで、実の父親のスモーキング・マンに撃たれて、そのまま退場していた。当然もう死んだと思っていたのだが、約三年ぶりに「実は死んでいなかった」としれっと戻ってきたので、軽く笑わせてもらった。まあ確かに劇中で銃声はしたものの、スペンダーが死んだとは誰も言っていなかったので、戻ってきても矛盾という訳ではないが、何故この段階でこのキャラが、という感は否めなかった。終盤、火傷男の正体が明かされる前、スカリーが「あのまま撃たれて死んでいれば良かったのに!」とののしっていたので、てっきり「アレックス・クライチェックが実は死んでいなかった」という真相かと思ってしまった。

 なお、火傷男を演じているのは、シーズン5・6でスペンダーを演じたクリス・オーウェンズその人である。あんな特殊メイクをしていては以前と同じ俳優とまるで分らないので、起用されても嬉しくもなんともない気もするがどうなのだろうか。もっとも、オーウェンズは

シーズン5・第5話「プロメテウス

において、「グレート・ムタト」という怪物役も演じているので、被り物とか特殊メイク役でもオッケー、という使い勝手のいい人なのかもしれない。X-ファイル的にはありがたい俳優というところだろうか。

 なお、劇中でスペンダーのDNAがモルダーのものと一致した、という展開になるが、DNA鑑定は指紋のように誰でも一人ひとり区別できる、というレベルではないらしいので、特にX-ファイルのスタッフが大嘘をつきまくっている、という事ではない模様である。

 今回のエピソードは、今までさんざん引っ張ってきたウィリアム話の完結編的な物だったが、「注射一本で超能力を抹消したあと、そのまま養子に出して終わり」というあまりにも淡白な結末でがっかりしてしまった。今まで散々

・ウィリアムの正体は、異星人なのか、政府に遺伝子改変された人間なのか、謎

・超能力(念力)を持っている

父親のモルダーと二人で人類を救う救世主コンビらしい

・しかし、人類の救世主から、一転して異星人の先導者にもなる可能性もある模様

 等々、回を追うごとに設定を積み上げていって、いったいこれをどう収拾するつもりなのか危惧していたが、その決着の付け方が「能力を全て消して、スカリーの元から(つまり画面内から)消し去る」という手に出たのには呆れてしまった。

 まあ、このままウィリアムを放置(?)しておけば、毎回赤ん坊を狙う宇宙人関係者がスカリーの家を来訪する話ばかりになってしまうし、さらに最終的にはモルダーと赤ん坊が二人で人類を先導して異星人軍団と一大決戦を行わないといけないだろうから、なんとか解決策をひねり出さなければならなかったのも解るが……、スタッフは、自分たちで宇宙人と関係する神秘的な超能力ベビーという設定を作っておいて、手に負えなくなったので無かったことにする、というのも無責任ぽい感じである。

 終盤、スペンダーがウィリアムに何かを注射し、最終的にそれが「マグネタイト」(magnetite)だと解る、という展開がある。マグネタイトは別にSF的な架空の物質ではなく、日本語では「磁鉄鉱」と呼ばれる鉱物で、鉄分を含み磁性を持っている。ウィリアムの血液検査の結果で「鉄分が多め」と出たのは、そういう理由だったのである。もっとも、何故マグネタイトを注射すると宇宙人の性質の超能力が消えてしまうのかは全く説明がなかったので、釈然としない。多分

第6話「トラスト・ノー・ワン

で「無敵兵士は鉄分に弱い」とか言っていたのと関係しているのだろうが、深く考えているのかはなはだ疑問である。そもそも鉄に弱い宇宙人とは何なのかという気がする。

 この終盤になってますます背景設定が理解不能になってきて、頭が痛くなってきた。まだスモーキング・マンが生きているような雰囲気だが、本当に生きているのか? アメリカ政府が宇宙人の人類を絶滅させる計画を手伝っているのか? 何故宇宙人は鉄分に弱いのか? これらの話のどこに「無敵兵士」というピースが入り込む余地があるのか? モルダーが人類の救世主という話はどうなった? 等々、盛りまくった設定に着地点が全く見えないのだが、収拾する策はあるのだろうか。